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水戸家庭裁判所 昭和49年(少ハ)6号 決定

少年 K・T(昭三一・八・一五生)

主文

少年を昭和五一年八月一四日を限度として医療少年院に戻して収容する。

理由

(申請理由)

少年は、

一  昭和四七年三月三〇日水戸家庭裁判所において窃盗保護事件により、初等少年院送致の保護処分を受け、千葉星華学院において矯正教育を受けていたものであるところ、昭和四八年五月二一日関東地方更生保護委員会第二部の決定により同年六月五日同学院を仮退院し、実母の住居地である前記本籍地に帰住して爾来水戸保護観察所の保護観察を受けていたものである。

二  右仮退院に際し、犯罪者予防更生法第三四条第二項所定の一般遵守事項並びに同法第三一条第三項に基づき右委員会第二部の定めた特別遵守事項について、これに違反しない旨の誓約をしたにもかかわらずその後右事項のうち、(イ)善行を保持すること、(ロ)酒やたばこを絶対にのまないことの各項目に違反した別紙記載のような行動があつた。

もしこれをこのまま放置するにおいては再非行を犯す虞れが十分あり保護観察を継続することによつて少年の改善、更生は期待できない段階に至つているものと認められるので、この際すみやかに少年院に戻して収容し、少年にふさわしい矯正教育を施すことによつて少年の反社会性を除去し、その更生の実をあげることが妥当であると認め、犯罪者予防更生法第四三条第一項により本申請に及ぶ。というのである。

(当裁判所の判断)

右申請理由記載の事実は、本件申請事件記録少年調査記録および当審判廷における少年および保護者の各供述によりこれを認めることができる。

ところで、昭和四九年八月二〇日当裁判所は本件により少年を試験観察に付し、肩書住居欄記載の「○○○園」○槻○男に補導を委託してその更生を期待していたのであるが少年は、翌二一日同委託先を無断出奔し、別に立件したぐ犯保護事件により観護措置決定を受けるに至つた。

これにより改めて少年の要保護性を見るとき自律性の欠如は当初の所見より遙かに深く、その酒精嗜癖と共にこれを矯正するため、少年を医療少年院に戻して収容し、専門家による矯正教育を施す必要が認められるので、犯罪者予防更生法第四三条第一項、少年審判規則第五五条及び第三七条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判官 服部一雄)

別紙

(一) 昭和四八年七月一五日頃酒店で四合入りの清酒を買つて帰宅しその夜、ふとんの中で全部飲酒し、

(二) 同年七月中旬頃、自宅において一升入りの清酒を全部飲酒し、

(三) 同年八月一三日頃、お盆の客として訪ねてきた兄K・Rより貰つた一五〇〇円の小遣銭で四合入りのウイスキー瓶一本(五〇〇円)を買い自宅裏で全部飲酒し、

(四) 同年九月初頃、自宅にある白米2升くらいを家族の留守中に持出し、四合入りのウイスキー一本を買い、自宅において二日ぐらいにわたつて飲酒し、

(五) 同年一〇月初頃、散髪代にするからと母をだまして貰つた一〇〇〇円で清酒一升を買いその日のうちに自宅にて全部飲酒し、

(六) 昭和四九年三月頃、母のもとに帰宅途中買つた一升入りの清酒および四合入りのウイスキーを自宅で全部飲酒し、

(七) 同年五月一五日頃、母のもとに帰宅途中買つた四合入りのウイスキーを自宅でその日のうちに全部飲酒し、

(八) 同年七月七日勤務先の○○商事株式会社○○出張所で先輩の机内より現金一二、〇〇〇円を盗み○○遊園地において一合入りの清酒三本を買い求め、同園内において飲酒し、

(九) 同年七月九日、近くの酒店より清酒一升、ビール二本を買い求め、同日、自宅において全部飲酒したものである。

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